ワインの豆知識
プレスパスを下げて走った3日間

2026年6月4日
初めての英語取材で見えたProWine Tokyo
2026年4月15日から17日まで、有明展示場でProWine Tokyo 2026が開催された。この展示会について、国際的なワイン・飲料業界メディア the drinks business に記事を寄稿する機会をいただいた。
英語で取材記事を書くのは、私にとって初めての挑戦だった。長くワイン講師として「伝える」仕事をしてきたが、今回は教室を離れ、日本市場の今を海外の読者に向けて英語で伝える立場になった。

取材する側に回って見えたこと
ワインの展示会と聞くと、グラス片手に優雅に会場を歩く姿を思い浮かべる方もいるかもしれない。
けれど、取材する側の現場はまったく違う。
インタビューは事前にアポイントを取り、相手先を調べ、質問も準備する。自分が使いやすい英単語や表現もメモして臨んだ。
それでも現場は、予定通りには進まない。
商談が長引き、次のアポイントが迫り、話は思いがけない方向へ広がっていく。気づけば、朝から夜まで何も食べていない。水を口にする余裕すらない。
その慌ただしさの中で、予定通りに進まない展開にこそ、取材の面白さがあるのだと感じた。
準備した質問に答えてもらうだけでは、記事は生まれない。相手の表情、声のトーン、その場の空気。そこから思いがけない一言がこぼれ、記事の切り口が見えてくることがある。

日本市場の「今」を、海外にどう伝えるか
今回特に難しかったのは、日本市場の「今」を、海外の読者にも納得感のある形で伝えることだった。日本にいる私たちには感覚的にわかることでも、海外向けの記事では、背景を整理し、限られた語数の中で何を残し、どの順序で伝えるかを慎重に考える必要がある。
そのとき思い出したのが、WSET Diplomaの3000 words essayだった。必死で向き合った経験が、思いがけず今回の執筆に生きた。

まさかの下町路地裏
掲載後にも、面白い発見があった。
ProWine Tokyoの総括記事を確認すると、使われていた写真は展示会場ではなく、下町の路地裏飲食街だった。
一瞬、そこを切り取るのか、と意表を突かれた。
そこにワインが写っているわけではない。けれど、それはプロの編集部が選んだ一枚だ。記事の内容を説明するだけでなく、海外の読者に「日本」という舞台を一瞬で伝える。自分が見ている日本と、海外メディアが切り取る日本。その違いを、写真一枚から感じた。
ワインを「教える」仕事の広がり
この3日間で、普段なかなかお目にかかれない方々に次々とお会いすることができた。短い時間の中に多くの出会いと気づきが詰まった、濃密な3日間だった。
そして、主催者である株式会社メッセ・デュッセルドルフ・ジャパンの富田那渚さんの姿には、素直に感動した。会場を動き回り、出展者や来場者の声を聞き、その場で次のアイデアへと結びつけていく。その熱量が、展示会の空気をつくっているのだと感じた。
ProWine Tokyoは、単なる展示会ではない。
産地と市場、生産者と輸入業者、海外の視点と日本の現場が交差する場だ。
プレスパスを下げて走った3日間。
会場で聞いた声、海外メディアを通して見えた日本市場の姿。
そのひとつひとつを、これから教室でワインを語るときの自分の言葉につなげていきたい。
ワインを「教える」仕事の広がりを、あらためて感じた。