ワインの豆知識


G.H マムのテロワールを深掘りする特別セミナー

メゾン・マム セミナーレポート

2026年2月4日

この内容は、メゾン・マムのアンバサダーであるクリストファー・シュヴィヤー氏が講師として登壇した「G.H マムのテロワールを深掘りする特別セミナー」での話をもとに、テイスティング時の解説や技術的背景を整理したものである。

マムというスタイル

彼がまず強調するのは、マムのスタイルの明確さだ。ピノ・ノワールを軸にしたフレッシュで張りのある味わい。マムのシャンパーニュは、熟成による重厚さよりも、ストラクチャーとフレッシュさを基軸として設計されている。現醸造責任者はヤン・ムニエで、その哲学は現在のキュヴェにも一貫して反映されている。

畑と醸造を近づける思想

マムは218haの自社畑を所有し、そのうち約7割がグラン・クリュに格付けされている。しかし、シュヴィヤー氏が繰り返し語っていたのは時間で、「畑からどれだけ早くプレスできるか」だった。マムではすべての自社畑の近くに必ずプレスを設置し、収穫後すぐに圧搾できる体制を整えている。これはマムのおいしさと品質を語るうえで、非常に重要なポイントであり、酸化や微生物汚染を最大限に抑え、ブドウ本来のピュアでフレッシュさを保つための拘りだ。

マムはなぜ挑戦し続けるのか

マムは伝統的でありながら、常に挑戦者でもある。シャンパーニュでは一般的でなかった228Lを超える大樽をいち早く採用し、樽香を付けるためではなく、ストラクチャーやわずかな酸化的ニュアンスを加えるために使用してきた。また、宇宙空間でも抜栓できるボトルの開発など、前例のない試みにも積極的だ。かつてF1レースを支援していた背景にも、「挑戦する人を応援する」というメゾンの姿勢が色濃く表れている。

コルドン・ルージュ【マグナムボトル】

コルドン・ルージュは、マムのスタイルを最も端的に表すノンヴィンテージである。ピノ・ノワール40〜50%、シャルドネ25〜35%、ムニエ20〜30%というブレンド比率。リザーブワインは約30%使用され、2〜12年分のワインをブレンドすることでスタイルの安定を図っている。ただし、あくまでフレッシュさを重視しており、熟成期間は約22か月、ドサージュは8g/L。使用されるピノ・ノワールはグラン・クリュおよびプルミエ・クリュのみで、スタンダードキュヴェでありながら、原料への妥協はない。試飲はマグナムだったこともあり、非常にトースティで750mlに比べ奥行が感じられる。

RSRV ― 歴史とコンセプト

RSRVという名前は、フランス語の「Réservé」に由来する。1838年、暗いセラー内でVIP向けの特別なシャンパーニュを誤出荷しないため、黒板に大きく「RSRV」と記したことが始まりだ。この実務的な工夫が、現在ではシリーズ名として受け継がれている。RSRVは、マムが所有するグラン・クリュ畑のみから造られ、テロワールの個性をボトルに閉じ込めることを明確なコンセプトとしている。

RSRV 4.5 ―フィロソフィーとスタイル

RSRV 4.5は、ヴェルズネイ、ブージィ、アイ、アヴィズ、クラマンという5つのグラン・クリュのブドウを使用し、4年間熟成されることから名付けられたノンヴィンテージ。このワインでは、畑や気候の違いよりも、毎年安定したマムのスタイルを供給することが重視されている。樽香は付けず、ストラクチャーと酸化的ニュアンスを加える造りで、シュヴィヤー氏はその印象を「少し発酵したりんごの皮、またはシードルのよう」と表現していた。リザーブワインは40%使用されるが、4〜15年と比較的若いワインに限定し、瓶内熟成は4年、ドサージュは6g/Lに抑えられている。香り味わい共に適度な酸化がナッツやハチミツのニュアンスを与え、長期の澱熟成がバゲットのような香ばしさを与えている。

再生農法という未来

2015年から始まった再生農法は、土壌の再生と気候変動への対応を目的とした取り組み。樹木や低木を植えることで根のネットワークを形成し、菌根菌を介して水分や栄養を畑全体で共有する。水分ストレスがある区画には水を補い、害虫被害が起きれば周囲のブドウ樹が防御反応を高める。森と畑をつなぐグリーンコリドーの整備や、ソラマメ、ライムギ、クローヴァー、アルファルファといったカヴァークロップの導入も、土壌とブドウ樹の健康を根本から改善するための重要な要素。

RSRV BLANC DE BLANCS 2015

RSRV Blanc de Blancs 2015は、コート・デ・ブラン北部クラマンの個性に焦点を当てたワイン。東〜南東向き斜面、約20cmと浅いチョーク土壌から生まれる高い酸と直線的な骨格が特徴。クラマン由来の「とげ」を和らげるため、泡の気圧は4.5に設定されている。ステンレスタンクのみを使用し、MLFは暑い年で酸度が比較的低かったため控えめに実施。2か月間、週1回のバトナージュを行い、6年間熟成。2015年は暑く乾燥した年で、8月下旬に収穫された早飲みタイプのヴィンテージである。シャルドネらしいピュアな果実味とスレンダーなボディに少しハーバルなニュアンスが感じられる。

RSRV BLANC DE NOIRS 2018【マグナムボトル】

RSRV Blanc de Noirs 2018は、モンターニュ・ド・ランス北〜北東向き斜面を中心に、ヴェルズネイらしさを表現したキュヴェ。石灰質と粘土が混じる深い土壌が骨格と深みを与え、北向き斜面由来の緊張感が全体を引き締めている。ステンレスタンクのみで醸造され、6年間熟成、ドサージュは6g/L。RSRV4.5のワインにさらに凝縮感や奥行を感じられる上質なワイン。

RSRV BLANC DE BLANCS 2012【マグナムボトル】

2012年は9月上旬から収穫。クラマンのチョーク土壌により水分ストレスを受けにくい畑。ステンレスタンクのみを使用し、MLFは100%実施。4.5気圧、6年熟成、ドサージュは6g/L。ブランド・ブランらしい透明感に加え、ピュアで上質なレモンタルトや焼きパイナップルの香りが広がり、ブリオッシュやナッツ由来の熟成香が美しく調和しています。個人的には、本日のテイスティングの中で最も飲み頃に達し、完成度の高さを感じたワイン。

RSRV CUVÉE LALOU 2002

RSRV キュヴェ・ラルーは、マムの頂点に位置するトップキュヴェで、近年では2002、2008、2013年のみがリリースされている。12区画の中から厳選された7区画を使用し、ピノ・ノワール52%、シャルドネ48%。古い大樽で区画別に一次発酵を行い、やや高めの温度で醸造、MLFは100%実施。10年熟成、ドサージュは6g/L。ここには、マムが積み重ねてきた技術と哲学のすべてが凝縮されている。よく熟したリンゴやハチミツに加え、沢庵や紹興酒を思わせるニュアンスが広がり、しっかりとした熟成感を感じさせます。熟成により泡は穏やかになり、より滑らかで落ち着いた口当たりが印象的。

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