ワインの豆知識

最も良いプレゼント

2025年12月22日

いつも年末になると、たくさんの友人からワインの相談が入る。お客様とか、親しい人にワインを贈りたいんだけど、何を選べばいいかわからない。大抵の場合、私の答えは、わからない時は、シャンパンを贈ればいい。

すると友人は言う。「でも、相手の人が、赤ワイン・白ワインを飲んでいる姿しか見たことありません」と。それでも、私はシャンパンを勧める。そこには、いくつか理由がある。

まず、贈りものというのは、相手の「普段の生活の延長線をそのまま先まで伸ばす」ためのものではないと思う。思いのある相手に何かを贈るというのは、相手の生活にひと握りの光をまき散らすという魔法を使う特権だと、私は思っている。普段飲んでいる缶コーヒー、スーパーで買っている弁当、ティッシュボックス、普段着ているユニクロのシャツ、もちろんコスパは高い。だけど、贈り物としてもらった瞬間に、せっかく相手の日常がバラ色に変えるささやかな魔法を使える場面なのに、魔法を使わずに済ませてしまうのは、やはりもったいない。

では何を贈ればいいか。好きだけれど、普段は自分では買わないものをもらったとき、そこに贈り物らしい喜びがふっと立ち上がるではないか。自分で買わない理由はいろいろあるけれど、なかでも多いのが「高いわりに、消耗品」というものだ。シャンパンは、まさにそういう存在だ。赤ワインみたいに翌日へ持ち越すことができない。翌日に残しても泡は逃げてしまい、最初の煌めきは失ってしまう。だから一回の消費コストがどうしても高くなる。結果として、人は日常用には自分にシャンパンを買うことが少ないでしょう。でもやっぱり、たまにはシャンパンを飲みたくなるよね。

じゃあ、シャンパンが嫌いな人はいるのか。もちろん「みんなが好き」とは言えないけれど、嫌う人は実際にあまり見かけない。歴史上の有名人たちも、シャンパンのこととなると、言葉が滑らかになる。ココ・シャネルは「恋をしているときと、していないときに飲むわ」と言い、ナポレオンは「勝ったときはそれに値する。負けたときは、それが必要だ」と言った。チャーチルは「シャンパンに出会うと、私はどうしても屈してしまう」と告白し、マーク・トウェインは「多すぎるのはよくないが、シャンパンだけは例外だ」と軽く開き直った。フランソワーズ・サガンは「シャンパンには、人生はまだ悪くないと思わせる魔法がある」とまで書いた。こんなふうに、男女を問わず、年齢を問わず、多くの人が胸の内でそっとシャンパンを愛していた。

クリスマスや年の瀬に、何を贈るべきかわからなくなったら、そのときは迷わず、シャンパンをお勧めする。贈られた人はきっと、いつもより少し華やかで、明るい一日を過ごすだろう。