食とワインの祭典 FOODEX JAPAN 2026 現場レポート

ワインの豆知識

食とワインの祭典 FOODEX JAPAN 2026 現場レポート

2026年4月10日

先月、FOODEX JAPAN 2026が東京ビッグサイトで開催された。
世界76カ国から3,000社を超える企業が出展する、アジア最大級の食の展示会だ。

昨年より「FOODEX WINE」も同時開催されており、ワインセミナーやフードペアリング体験など、ワイン好きには見逃せない内容となっている。
「ワイン×食」を通じてワイン業界の発展や日本食の海外発信を目指すというコンセプトは、多くの来場者の関心を集めていた。

今年もFOODEX JAPANには世界各国のワイナリーが数多く出展していたが、この時期ワイン業界は展示会ラッシュである。
2月のワイン・パリ、3月のプロヴァイン・デュッセルドルフ、FOODEX JAPAN、そして4月にはプロワイン東京、プロワイン・シンガポール、ヴィニタリーと、大規模なイベントが立て続けに開催される。さらにブルゴーニュの試飲会など、プロ向けのイベントも各国で開催されている。
生産者によっては出展のため海外を渡り歩く季節と言えるが、日本のバイヤーさんにとっても海外出張が増えるタイミングだろう。

そんな中で迎えるFOODEX JAPAN。
開催前日、広いホールにレッドカーペットが敷かれ、次々とブースが出来上がっていく様子は圧巻で、無機質な空間が、あっという間に華やかな会場へと変わっていく。

同時に多くの出展者も、初日に向けて準備を進める。私も前日は搬入へ。
搬入は力仕事なので動きやすい服に加え、埃や花粉対策のマスク、軍手も必需品。

パレットで届く何十ケースものワインを箱から出し、1本ずつ状態を確認していく。軍手をしていると滑りにくく、同時にボトルの埃も拭けるので一石二鳥だ。
すべてのボトルを並べ終えて、前日の準備は完了。

そして迎えた初日。3月10日朝は、まさかの雪。
少し不安になるスタートだったが、その後は天候にも恵まれ、4日間の来場登録者数は昨年を上回る約73,000人。会場は終始賑わいを見せていた。

私が担当したフランスパビリオンのブースで特に人気が高かったのが、ピエール・ブレだ。ブルゴーニュ地方ジュヴレ・シャンベルタンに本拠地を構えるワイナリーで、日本にもファンが多い。AOCメルキュレは赤ワインのイメージが強いが、ここのメルキュレ・ブランはまるでムルソーのようなコクが味わえると評判だ。赤ワインの品質も高く、フラッグシップは、AOCジュヴレ・シャンベルタン「クロ・ド・ラ・ジュスティス」。ピエール・ブレの所有畑の中でも有名なモノポールだ。


また、近年はシャンパーニュの価格上昇もあり、同じ製法で造られるより手頃なクレマンの需要が世界的に高まっているが、会場でも注目度の高さを実感した。

このピノ・ノワールとガメイから造られるクレマン・ド・ブルゴーニュ・ロゼは、AOC認可以前の1972年からクレマン造りに取り組んできた先駆者、バイィ・ラピエールの一本。近くに出展していたブリオッシュ・パスキエ社のフランボワーズのマカロンとの相性も抜群で、赤系果実の風味が綺麗に調和していた。こうしたブースをまたいだ出会いも、展示会の楽しみのひとつだ。


そして大盛況のまま迎えた最終日。
夜便で自国へ帰る出展者も多く、海外パビリオンの中には昼頃から撤収を始めるブースや、すでに人影のない「閉店状態」のブースも見られる。これも最終日ならではの光景だ。

今年も多くの出会いと発見に満ちたFOODEX JAPANだった。
ここで得た知見は、今後の授業に活かしていきたいと思う。

ワインボトルから、何を読む?

ワインの豆知識

ワインボトルから、何を読む?

2026年2月23日

学生の頃、タワーレコードのようなCDショップには試聴コーナーがあり、ヘッドホンで自由に音楽を聴くことができた。知らないアーティストでも、何気なく聴いてみると非常に好みのことがあり、あの「出会ってしまった」ワクワク感は、今も忘れられない。

ワイン選びにも、それに似た楽しさを感じる。選ぶとき、試飲ができたら最高だ。
飲んでから買える安心感もさることながら、「自分では選ばなかった一本」が意外と好みだった、なんて出会いも楽しい。

でも、実際には試飲できない場面のほうが多い。
そんなとき、あなたは何を頼りにしていますか?
手書きのポップ? 店員さんのお勧め?今の時代スマホで検索する人も多いかも知れないが、わざわざ調べなくてもワインボトルを通じて様々な情報が発信されている。

まず、表ラベルに書かれた産地や品種、アルコール度数などの情報。
ワインを学ぶと、これだけでもスタイルの方向性が見えてくる。

裏ラベルもまた、情報の宝庫だ。輸入元がワイナリーの紹介や「甘口、リンゴの風味が楽しめるワイン」のようにスタイルを簡潔にまとめていることもあれば、限られたスペースの中に、生産者自らがワイナリーの歴史、テロワール、醸造方法、さらにはおすすめの提供温度や料理との相性まで丁寧に書かれていることもあり、消費者に直接情報を届けたい、より美味しく楽しんでほしいという思いが伝わってくる。

そして近年、存在感を増しているのがQRコードだ。
QRコードを読み込むだけでワイナリーのプレゼンテーション、ワインの詳細が書かれたテクニカルシート、テイスティングノートなどの情報にアクセスできる。小さな四角の向こうに、広いワインの世界が広がっている。
中には、物語体験と結びついているワインもある。オーストラリアの「19 Crimes」は、QRコードを読み込み、表ラベルをスキャンすると、ラベル上の人物が語りかけるAR体験を提供していて、ワインの背景にあるストーリーをより身近にしてくれる。
「Tussock Jumper」はQRコードにビデオや写真を登録できる仕組みを導入したキャンペーンを展開、ワインボトルをパーソナルな贈り物へと変えた。

ボルドーのCru Bourgeois(クリュ・ブルジョワ)格付けワインには、QRコード付きの認証ステッカーが貼付されている。このステッカーは品質保証と偽造防止の役割を担うと同時に、消費者を生産者の公式情報サイトへと導く入り口にもなっている。QRコードを読み込むことで、生産者情報やワインの詳細を確認できる。
スペインのD.O.CAVA(カバ原産地呼称委員会)のステッカーにもQRコードが組み込まれていることがあり、読み込むと公式サイトにアクセスして原産地やカテゴリーを学ぶことができる。新しい品質ラベルは、消費者がワインの背景や特徴をより捉えられるように設計されている。

さらに、2023年12月以降、EUで生産され、EU市場で販売されるワインについては、栄養成分や原材料の表示が義務化され、QRコードでこれらの情報を確認できる仕組みも広がっている。

いずれもQRコードを読み込むだけで瞬時に正確な情報へアクセスできることが大きな魅力であり、生産者と消費者を直接つなぐ、まさに「win-win」のツールになっているように思う。

そして、面白いのは、ワインボトルを通じて訴えかけるのは視覚だけではない、ということ。

昨年のFOODEX JAPANで出会った南仏ブランド「L’atelier Arthur & Jules」のPay d’Oc IGPは、嗅覚に訴えかけるユニークなワインだった。ワインメーカーと香水クリエイターが共同で手掛けたこのシリーズでは、白・ロゼ・赤それぞれのワインをイメージした香水がガラス栓に染み込ませてあり、開ける前からワインの世界観が感じられるのだ。


白ワイン(グルナッシュ・ブラン×ヴィオニエ)の栓からは桃を思わせる甘やかで心地よい果実香が、ロゼワイン(グルナッシュ・ノワール×シラー)と赤ワイン(グルナッシュ・ノワール主体)の栓からはフランボワーズを想起させる赤い果実の香りが漂う。実際のワインの華やかなアロマとも響き合い、二度香りを楽しめる新しいワインとして、多くの来場者の関心を集めていた。


さらに、シャンパーニュの名門「Krug」では、聴覚を楽しませてくれる仕掛けを用意している。ボトルに表示された6桁のIDを専用アプリに入力すると、シャンパーニュに合わせたミュージックペアリングが楽しめるのだ。

このように、ワインそのもの以外の部分で五感を刺激する取り組みは、分かりやすさと驚きを兼ね備え、普段ワインに親しみのない人々の興味を引き寄せるきっかけにもなり得るのではないかと思う。

ワインボトルは、もはや単なる容器ではなく、デジタル技術や五感を刺激する新しい仕掛けが重なり、「飲む」だけにとどまらない広がりを見せている。物語への入り口であり、生産者とつながる窓でもある。いつかワインボトルを手に取るだけで、香りや味わいが疑似体験できる日が来るかも知れない。
ワインと新たな技術がどのように交差して、どんな新しい感動を生み出していくのか今後も楽しみだ。